私は今の会社に一般職として就職し、事務を主な仕事内容としている。毎日決まった時間に出社し、毎日決まった仕事をし、毎日決まった時間(定時)に帰社する。太陽が東から昇って西に沈むのと同じくらい当たり前のように、私の当たり前のような毎日は淡々と過ぎていった。私は別に「もっとバリバリ働きたい」とか「こんなルーティンワークばかりなんてやってられるか」というアグレッシブな性格ではなく、むしろコンサバティブな方だと自覚しているので、そんな毎日でも不満なんて何もなかった。というより、こんなことでお金を貰えていることの方が有難いと思っていたくらいだ。

ところがそんな私の生活に、太陽が西から昇って東に沈むような出来事が起きた。うちの事業所長が出張に行くことになり、秘書を連れていく予定だったのだが、その秘書の方が入院してしまったため行けず、何と私に白羽の矢が立ってしまったのだ。えぇーっ、私が出張!?しかも行先は北海道だという。私は仕事であるのも忘れて、気分が浮かれてしまうのを押さえられなかった。

ところがホテルについてから、ちょっと買い出しにと出かけたとき、旅慣れていない私はカードキーを部屋に入れっぱなしにしたまま外に出てしまった。あっと思ったときには時すでに遅し。出張先で痛恨のインロックをしてしまったのである。しかもそのミスが後を引きずり、仕事でも失敗して事業所長には迷惑をかけてしまうし、散々だった。やはり太陽が東から昇って西に沈む、そんな生活が私には一番合っているのだと痛感したのだった。